2011年9月4日日曜日

湯川秀樹のリンダウ講演 (Hideki Yukawa's Lindau Lecture)


Read in English.

 サイエンティフィク・アメリカン誌の第61回ノーベル賞受賞者リンダウ年会についての記事 [1] を読んでいて、同会議のホームページ [2] を知った。そのページを下へスクロールすると、オンライン講義へのリンクがある。リンク先では、ノーベル賞受賞者たちの100以上の講義を聞くことが出来る。それらの講義の中に、第3回ノーベル賞受賞者リンダウ会議(1953年、物理学第1回会議)での湯川秀樹の講演「素粒子の統一的理論への試み」がある。湯川の講演アブストラクトに代えて、編集者 Anders Bárány による簡単な紹介が掲載されている。

 Bárány は、湯川の講義の全文は1981年の Naturwissenschaftliche Rundschau 誌特別号に掲載され、リンダウでの講演になかったかなり複雑な式を多く含んでいる、と記している。その日本語版は、『自然』誌の1953年11月号に掲載され、1981年11月発行の同誌の湯川追悼特集増刊号に再録されている。

 ここに、Bárány の紹介文の重要部分を引用する。

 この講演が行われたのは、宇宙線と高エネルギー加速器の中で多くの種類の素粒子が見つかったことが物理学の主な問題であった時代のことである。[…]それは湯川が公演中で述べたように、「パウエルが私にとって不要な多くの余分な粒子を見つけた」という問題であった。現在、それらの「余分な」粒子を分類し、すべての力を計算出来る、素粒子の標準模型がある。しかし、湯川が素粒子の統一的理論を定式化しようとした試みによって探し求めていたものは、まだなお得られていない。[…]

湯川が当時試みていたのは「非局所場の理論」という方向であった。

 湯川の英語の話し方には京都なまりがある、という噂があった。しかし、このリンダウ講演を聞くと、私にはそうは思われない。この講演での彼の声は若々しく聞こえ(このとき、彼は46歳)、"The Yukawa Story" [3] というビデオのナレーターとして聞くことの出来る子息、高秋の声にかなり似ているような気がする。また、湯川の英語講演は、大学の教室においての日本語での講義よりも聞きやすいように思われる。

 湯川のリンダウ講演記録の日本語版について教えて貰った M・M 氏に感謝する。


  1. S. Mirsky, Noble Nobel faces: A week in Lindau, where scientists are celebrities. Scientific American (September 1, 2011); printed version, September issue, page 78 (2011).
  2. The Nobel Laureate Meeting at Lindau: Educating, Inspiring, Connecting scientific Generations since 1951, www.lindau-nobel.org.
  3. The Yukawa story, You Tube video (uploaded on December 23, 2009).

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