2015年8月2日日曜日

午睡の友 (Friend of Afternoon Naps)

[The main text of this post is in Japanese only.]


昼寝中のパンダの子ども。2015 年 7 月 7 日、白浜のアドベンチャーワールドで。
Child panda taking a nap. The picture was taken in Adventure World in Shirahama on July 7, 2015.

 暑い日が続く。このところ、岩波の『図書』誌 8 月号を友として午睡をした。

 同誌に翻訳家・石井登志子が書いている「リンドグレーンの生涯」は、児童文学作家という肩書きからは想像しがたい、アストリッド・リンドグレーンの一生を教えてくれた。18 歳で未婚の母となったこと、原発反対、子供への暴力の禁止、女性の権利、人口問題、動物愛護などについて積極的に意見を発表したこと、彼女の主張で法律が変えられたことも幾度もあったこと、など。

 作家・髙村薫が連載しているエッセイ「作家的覚書」の今月号記事「真面目に生きる」も、なかなかよかった。「健康のためにほぼ毎日馬に乗る」と始まる。作家の日常の話かと思って読み進むと、「私のような還暦を過ぎた独身者には、集団的自衛権の行使も[…中略…]、影響は限られているが、代わりに直接の影響がある自衛隊員[…中略…]の不安に思いを馳せ、[…中略…]政治への真剣な怒りを募らせる。これが真面目に生きるということだ」として、「戦争法案」に対する鋭い批判を展開している。

 作家・高橋源一郎の「見える戦争と見えない戦争(下)」では、引用されているスーザン・ソンタグの言葉、「意見というものの困った点は、私たちはそれに固着しがちだ、ということである」が気に入った。科学上の論争でも注意すべきことだ。

 地球科学者・諏訪兼位(すわ かねのり)の文、「時代を超える『学生に与ふる書』」の末尾には「[…]六九年ぶりに『学生に与ふる書』を読み、今なお色褪せていないことに二度目の驚きを覚えた。戦争中に書かれた書だが、今、ぜひ再読されたい」とある。(一度目の驚きは、諏訪が旧制高校時代に、同書の著者・天野貞祐の共訳書『プロレゴーメナ』の岩波文庫版を読み、いくつかの誤植を見つけて岩波書店に葉書を出したのに対し、天野から丁重な礼状が来たことである。)引用した末尾の一節がなくても、『学生に与ふる書』を一読したいと思わせるエッセイである。

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