2015年8月15日土曜日

「平和を求める人たちは幸いです」、そして与謝野晶子の言葉 ("Blessed Are Peacemakers," and Akiko Yosano's Words)

[The main text of this post is in Japanese only.]


タカサゴフヨウ(高砂芙蓉)。ヤノネボンテンカ(矢の根梵天花)とも呼ばれる。
2015 年 8 月 14 日撮影。
Pink pavonia; taken in my yard on August 14, 2015.

「平和を求める人たちは幸いです」、そして与謝野晶子の言葉

 友人 A 氏からの暑中見舞い葉書には、毎年『聖書』の一節が毛筆で記されている。先般届いた今年の葉書には、「マタイ 5 章 9 節」の「平和を求める人たちは幸いです。その人たちは『神の子』と呼ばれるからです」の言葉があった。A 氏にはこのところ何年も会う機会がないが、彼がいまこの言葉を選んだのは、保守的な考えの持ち主のように見える彼も「戦争法案」には懸念を持っているからだろうと想像している。

 さる 7 月 25 日から 30 日まで、堺市のサンスクエア堺ギャラリーで、『戦後 70 年 平和をつなぐパネル展・堺〜戦争をふりかえる〜』が開催された。私は 481 人の賛同人の一人として、ささやかな賛同金を納めながらも、パネル展を見に行く機会を得なかった。しかし、昨日、同展実行委員会から礼状と会場で配布したパンフレットが送られてきて、その内容がよく分かった。

 上記のパンフレットの最終ページには、歌人・与謝野晶子(1878–1942)が 1918 年 3 月 17 日付け『横浜貿易新報』紙に書いた「何故の出兵か」という文の抜粋が掲載されている。それを以下に、さらに抜粋してみる。
 日本人の上に今や一つの大問題が起っております。[…]それは西比利亜(シベリア)へ日本の大兵を出すか出さないかという問題です。[…]

 さて我国は何のために出兵するのでしょうか。秘密主義の軍閥政府は出兵についてまだ今日まで一言も口外しませんから、私たちは[…]想像する外ありませんが[…]

 しかし私たち国民は決してこのような「積極的自衛策」の口実に幻惑されてはなりません。[…]独逸(ドイツ)が[…]その武力を割いて西比利亜に及ぼし、兼ねて日本を脅威しようとは想像されません。我国の参戦程度を手温(ぬる)しとする英仏は、種々の注文を出して日本を戦争の災禍の中心に引き入れたいために、独逸勢力の東漸を法外に誇大するでしょうが、日本人はそれを軽信してはならないと思います。

 […]戦費のために再び莫大の外債を負い、戦後にわたって今に幾倍する国内の生活難を劇成するならば、積極的自衛策どころか、かえって国民を自滅の危殆(きたい)に陥らしめる結果となるでしょう。

 以上は紙数の制限のために甚だ簡略な説明になりましたが、この理由から私は出兵に対してあくまでも反対しようと思っております。
 「簡略な説明」に対して抜粋を重ねても、晶子の炯眼が十分に伝わるであろう。そして、シベリア出兵(注参照)前夜の状況が、いまの「戦争法案」国会提出の事態に酷似していることにも注目しなければならない。いくつかの言葉を書き換えれば、晶子の文はそのまま「戦争法案」反対に適用できる。敗戦から満 70 年、わが国の外交政策を武力に頼る方向に逆戻りさせてはならない。

 注:対ソ干渉戦争、1918–1922。ソビエト政権と、反革命勢力および革命に干渉するため出兵したイギリス・フランス・アメリカ・日本などとの間の戦争。日本は 10 億円(当時)の金を使い、7 万 3 千の兵を出し、3 万 5 千人の死傷・病疫者を出して、対ソ干渉諸国の中で最もみじめな形で撤兵—敗戦—した(加藤文三ほか『日本歴史 中 改訂版』新日本出版社、新書版、1978)。しかし、軍国主義時代の学校では、この敗戦について教えられることがなかった。

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